母の日について考える
2022年の「母の日」は5月8日です。 皆さんはこの日に何かお祝いをご自分のお母様のためにする、あるいはご自分のお子さんから受ける予定がありますか?
私は子どもの頃「母の日」にあまり特別な思い入れがなかったように思います。
ちょっと薄情な気もしますが、その日にカードやプレゼントを母親に贈った記憶がありません。15才まで育ったフランスでは5月のメイン行事と言えば「スズラン祭」(5月1日)であり、赤いカーネーションがどういう意味を持つのかも日本に帰るまで知りませんでした。
むしろ「母の日」を意識し始めたのは大人になってから、正確に言えばカナダに来てからです。「母の日」は記念すべき大きなイベント
私がこのコラムでご紹介するカナダでの生活の様子は、多くの場合、私のカナダ人の夫の家族・親戚がベースとなっています。
今回も例外ではありません。 私たちが結婚して間もない頃のことですから、ずいぶん昔の話になります。
カナダでも「母の日」は5月の第二日曜日に制定されていて、まだ少し肌寒い週末に夫の実家を訪ねました。
すでに大勢の子どもたちや孫たちが義母のために集まっていて、それぞれが手作りのカードを渡し、花束を贈っていました。 それから皆で散歩に行くことになりました。
家族全員で近所の森を散策して、野花を摘むのが恒例となっているから、と教えられました。
もちろんこの日の家事は主に男性陣が担い、夕食の調理や食卓のセッティング、後片付けまでをやり遂げていました。(すでに4児の母親であった義姉はともかく、当時まだ子どものいなかった義妹や私は手伝ったように思います)
夫の家族が特に仲が良いから義母のために凝ったイベントが行われるのかな、とその時は思いました。
しかしクリスマスに関しても言えることですが、この国では年中行事や記念日をしっかりと(いや、かなり大袈裟に)祝う家庭が多いらしい、ということを徐々に学びました。
「愛情や感謝の気持ちは言葉や物で示さなくても分かるだろう」で済ませてしまうのはただの怠慢。そう言われると確かにそんな気がして来ます。
おかげで私も遅ればせながら、日本にいる母に毎年、感謝の言葉と共に花を贈ることを心がけるようになりました。
お母さんが「母の日」にしてほしいこと
4月も半ばを過ぎると “Mother’s Day” にまつわるニュースや広告を頻繁に目にするようになります。
お菓子、エステ、旅行、アクセサリー、など様々なプレゼントのアイデアが盛りだくさん出てきますが、とにかく「その日はお母さんをお姫様のように扱いましょう」というのが北米式のようです。
でもせっかく祝うのであればトレンドはさておき、自分のお母さんが本当に喜ぶことは何だろう、とそれぞれの家庭で考えるのが大事だと思います。
その女性の好みによって、あるいは置かれているライフサイクルの段階によって、どのようなものが心を打つのかが変わってくることも考えられます。
あの当時の義母の場合を振り返ると、子どもが全員成人していたので、賑やかに孫を連れて集まって来てくれる方が嬉しかった。そして自然に囲まれるのが好きで、木々や花の名前を良く知っているような人でしたから、皆で森を散歩するというのが彼女の望んだ行事だったのです。
でももっと若いお母さんだったら、子育てに追われて日頃なかなか自分の時間が取れない場合も多いでしょう。
「一人で美容院やネールサロンに行かせてほしい」と思うかも知れないし、「一日家事をせずに過ごし、ゆっくりと本を読んだり好きな映画を観たい」というのもオプションとなるでしょう。
母親としての役割から解放されたいと思う人もいれば、逆に子どもたちに囲まれて母親であることを味わいたいと思う人もいる。
それを考慮したお祝いをすれば「お母さんのことを良く分かっているよ」というメッセージが伝わるでしょう。 ところで日本のお父さんが「母の日」にどのような役割を果たすのかはよく分からないのですが、カナダではお父さんの責任がけっこう重いように感じます。
子どもたちが小さい間はお父さんがリーダーシップを取って、「特別な日」の演出を考え、子どもたちと一緒に実行する、という図式が求められるからです。
お父さんが(自分の母親、だけではなく)「自分の子どもたちの母親」である妻に対して心からのリスペクトを示すことで、子どもたちにも良い影響が及ぶ。
「母の日」はそういう機会でもあるわけです。もちろん、日頃からそういう姿勢を見せていないと年に一度だけ、頑張っても効果は少ないですが…。
「最高の贅沢」とは?
では最後に、私がずっと疑問に思っていたことについてお話ししましょう。
ひと昔前ほどではないにせよ、欧米では「特別な日に受ける最高に贅沢な扱い」の代表的なものとして 「ベッドで朝食を取る」 がしばしば挙げられます。
ご存知でしたか?
朝起きたら暖かいコーヒーまたは紅茶、卵料理、パンケーキ、フルーツなどが綺麗に並べられたトレイが寝室に運ばれて来る。
それをベッドでゆったりと食べることが多くの人にとって、特に女性にとっての憧れだ、と言われています。
なのでカナダでも「母の日のおもてなし」となると、この「Breakfast in Bed」がけっこうランキングのトップに上がってきたりするのです。 これはいったい、どういう心理でしょうか?
普段は朝早くから台所に立って家族皆の朝食を整えるけれど、たまには寝坊をして、しかも夫や子どもが朝ごはんを作ってくれたら嬉しい…というところまでは分かります。
しかし何故、寝室で、しかもベッドに入ったまま食べることに憧れるのでしょうか?
日本では寝床で食事を摂る、というのは病気の時くらいしかないように思います。旅館の朝の「部屋食」でさえも、布団は片付けて座卓で食べますよね?
私自身、海外生活が40年を超えますが、今も昔もベッドで物を食べたいと思ったことはありません。
だって…
・パンくずがシーツに落ちたままになって、次に寝る時に見つかったら嫌じゃない?
・紅茶がこぼれて寝具が汚れたらどうする?
・それよりもまず、寝起きに朝食を持って来られたら、いったん起きて洗面してまた戻って来るまでトレイを持ったまま待っててもらうの?
などなど、考え出したらきりがありませんが、おそらくそういう細かいことが気になってしまう時点でもう夢が無いのだと思います。
やはりキーワードは「贅沢」ということでしょう。
今回、改めてこの問題について考えてちょっと分かったような気がしました。
日本でも大人気の英国ドラマ「ダウントン・アビー」では貴族の奥様方がベッドで少し身体を起こして、メイドの運んできた朝食を取っている光景が良く出て来るかと思います。
昔の上流階級の既婚女性は午前中、たいした用事もないので、他の家族と一緒にダイニングルームで朝食を摂る必要がなかったらしいのですよね。
ということで、優雅に紅茶を飲みながら新聞を読んだり、手紙に目を通したり、はたまた部屋に入って来た旦那さんとゴシップを交わしたりしていらっしゃる。
まさに、あのイメージ、です。 落ちたパンくずを拾うのも、紅茶がこぼれたらシーツを替えるのも、奥様が洗面して戻って来るまでに枕をパンパンと叩いて座りやすいように整えるのも、全てやってくれる誰かがいる、ということが前提になっているのです。
そして食べ終わったらトレイは下げられ、奥様はゆっくり起きて身支度をするのもよし、あるいは二度寝をするのもよし。
というわけで欧米の女性の多くは自分もたまにはそういう気分に浸ってみたい、と思うのかも知れません。
現にこちらの通販サイトでは検索欄に「breakfast in bed」と「tray」を併せて入力すると、ちょっと高めの縁と15センチほどの足のついたトレイが見つかります。未だに需要がある、ということでしょうね。
ところでこの記事について夫に意見を求めたのですが、何を思ったか息子たちに「今年はお母さん、『母の日』にベッドで朝ごはんが食べたいんだって」と言うじゃありませんか。
ジョークだとは思いますが、それよりもちゃんと食卓でロゼのシャンパンを注いでもらう方が嬉しいんだけど、としっかり訂正しておこうと思います。
スチームクリームの母の日ギフト
セット発売日の4/20(水)よりご注文いただけます! ※数量限定のため、無くなり次第終了となります。
オンラインストア限定 母の日セットA(SUMMER・ETlip)
オンラインストア限定 母の日セットB(JOURS・SG)
\ギフトにもぴったりの花柄デザインも!/